2012年10月25日木曜日

ラダック最終日

レーの野菜マーケット

10月13日 レー

前の日はヌブラ谷からレーに帰ってくるのに、予想外に丸一日費やしてしまった。
この時期になると山道が頻繁に積雪で封鎖され、そのたびにタクシーやバスは何時間も待ちぼうけをくらう。

7人乗りのぎゅうぎゅう詰めのタクシーに10時間というのはなかなか体に応えるもので、僕はかなり疲れ切ってしまったため、ラダック最後の日はパンゴンレイク弾丸ツアーをなしにしてレーをゆっくり散策することにした。
パンゴンレイクはヌブラ谷と並んで2大観光名所に勝手に設定していたので、行くのをやめると決める時はかなり迷ったけど、これ以上体に鞭打って観光してもつらい思い出が残るだけだと思ってやめた。
旅をしていると、僕の場合こういう場面は結構あって、
実際、時間と予算のことだけを考えればそれはもう色んなところを回れるのだけど、そこで一歩とどまって旅のやる気と体力に相談するようにしている。
行きたいところ全てに行くことは無理だし、あとで後悔するかもしれない、と思って無理をすることで体を壊したり精神的にしんどくなったりして結果的にその土地につらいイメージが残ってしまうこともある。
あと、自分の時間と予算と旅のやる気と体力、これらのバランスを上手にとる習慣をつけていれば、自分はバリバリ観光するタイプなのか、それとも観光はほどほどに現地の人との交流を楽しむタイプなのか、1人で物思いにふける時間を大切にするタイプなのか、次第に自分独自の旅のスタイルが分かってくるんじゃないかなーとも思っている。

と、こんな風にダラダラ言い訳をしている時点でパンゴンレイクに未練たらたらなのだけれど、
自分に素直に行動すると良いことがあるもので、
この日約10日ぶりに日本人に遭遇した。
日本語を発するのが10日ぶりだったので、上手く話せるか不安で心の中でリハーサルを何度もしてから話しかけたのに、自分でもびっくりするくらいかみ散らかした。
日本語でもこれなのだから英語とか外国語を継続して勉強することは大事なんだな、というか、1週間も空けてしまったらそれまでの勉強はほとんど意味をなくしてしまうのかなとさえ思った。

 というわけで、その日の午後は念願の日本人の美沙さんとレーを散策した。

野菜マーケットの様子、こんな岩山地帯のどこからこれ程の野菜が湧いてきたんだというくらい種類が豊富。

魚。これを見て早くデリーに行ってフィレオフィッシュが食べたくなった。
レーの景色。このあまりにも当たり前に存在していた絶景とも今日でお別れ。
チャイ以外は野菜マーケットでもらったものなので、10ルピー(15円)でおやつ。

久しぶりに本格的に人と話して、心がホッとなって、見慣れたレーの絶景から今までとは違う美しさを感じたのが印象的だった。
今回オフシーズンに1人きりでラダックをめぐってみて、景色は本当に絶景ばかりで、その絶景を独り占めしているような感覚になるという貴重な経験もできたけど、最終日、人と楽しく話しながら観たこの景色は今までと全く種類の違う絶景だった。
どっちが良かったというわけではないけど、ここまで違うというのはちょっとびっくりだった。
また、次は友人と来て、今度はこっちのタイプの景色を満喫したい。


というわけで、とても平和なラダック最終日を過ごしたあと、次の日の朝3時半のバス(最後まで不便すぎる笑)に乗りマナリ―へと向かった。

※オフシーズンのラダックが不便なのは、僕がオンシーズン並みの料金で観光しようとしたからで、お金に余裕があれば、ジープをチャーターしたり高めのホテルに泊まったりして不便さも寒さも防げます。ただこの時期が本当に観光できるぎりぎりの時期のようです。(僕がマナリ―に着いた日にレー~マナリ―間が封鎖されました笑)

2012年10月22日月曜日

ヌブラ谷

ヌブラ行きのタクシーだたくさん通る山道
10月11日 ~ヌブラ谷~


朝5時に宿を出ると、外は真っ暗だった。

今日もまた失敗だったらラダック観光はもう諦めて今日にでも山を降りよう。と考えながら暗くて寒い早朝のレーを歩いた。

人気が全くない代わりに大量の犬がうろうろしていたり交尾していたりしてなかなか不気味だった。
こんな状況の中、山道まで行ってあるのかどうかもわからないヌブラ谷行きのタクシーをヒッチハイクする。さすがに成功する見込みは低いな、と思いながら歩いた。

しばらく歩くともっと犬が増えて、異常な数になって前に進めないほどになってしまった。
その時偶然かなり遠くに現地人が通りかかったので、走って近寄った。現地人はすごく野犬慣れしているのでボディーガードを得た気分になり僕は安心したが、相手はいきなり暗闇から笑顔で現れた僕にちょっとビビっていた。

彼はスリナガルというラダック北西に位置するカシミール地方の出身でたまたま同い年だった。今は大学2年生で卒業後はニュージーランドでパイロットになるらしい。パイロット志望の学生とは初めて出会ったのでかなりテンションが上がった。

しかも彼によると、なんと本当にヌブラ谷行きのタクシーが通る場所があるらしい。
昨日からほとんど諦めモードだったので本当にうれしかった。今までの不運が全て報われた気分になって彼と抱き合って(というか一方的に抱きついて)喜んだ。

山道を進むと、それらしきタクシーの集団があった。彼は最後までちゃんと送り届けてくれた。さすがパイロット志望。お礼を言いまくって、連絡先を交換して別れた。話もすごく盛り上がって気が合いそうだったし、また会えるといいな。

タクシーには僕1人かと思いきや、出発して15分足らずで1人また1人と計6人乗り込んできて7人乗りになった。地元の人にとってこの方法は割とメジャーらしい。旅行者はいなかった。

そしてこのタクシーからの景色が最高だった。
昨日からずっとネガティブな気分だったのも相まって、泣きそうになるほど感動した。
とにかく標高が上がれば上がるほど景色が良くなり、レーの景色などほんの前座であったかのように、物凄い絶景が延々と続いていた。





しかもヌブラまでの景色は四季が移りゆくようだった。
さっきまで砂や岩で覆われていた山肌がいきなり一面の銀世界になり、秋の景色になり、高山独特の青い川が現れたりと、ものの数時間の間に次々と景色が変わっていき全く飽きない。

冬山

秋山



あっという間にヌブラ谷に着き、ドライバーが紹介してくれた宿に荷物を置き、早速散策に出かけた。

ヌブラ谷にあるディスキット村からの景色

いかついヌブラ

のどかなヌブラ

ザ・ヌブラ
こんな大自然の中をずっと1人で歩いた。
ヌブラでは旅行者にはとうとう1人も会わなかった。本当に人が少なく、歩いていてもたまに農家の人とすれ違うくらいで、まさにこの絶景を独り占めしているという感覚。
オフシーズンの唯一のメリットだろう。
途中、人が周りに全くいなくなった。
しばらく待っても誰も来なかったのでちょっと昼寝をしてみた。起きて、本を読んだり妄想にふけったり。
その間も全く人が通らず、しまいには周りに牛もいなくなり、鳴き声も聞こえなくなった。
あたりがしーんとした空気に包まれる。
悟りを開いたかと思ったが、どうやら天気が怪しくなってきたようだった。

宿に戻らなければいけなさそうだったので、最後にヌブラ谷で一番高いところにある菩薩を見に行ってみることにした。
一昨年ここにダライラマが訪れた際に建てられた新しい菩薩らしい。登ってみるとチベット僧がたくさんいた。
菩薩を目指して登っている際に見つけたいい感じの建物群。

この建物の山奥にひっそりとそびえる感に惚れてずっと見ていた。
ずっとみているとだんだんロマンチックな気分になって、こんな場所にもう一つの村があるのかな、とか、今は誰もいないけど昔ここで文化が栄えたのかなとかいろいろ妄想していると、下からバイクで坂を上ってきた坊さんに「あれは寺だよ」と軽く言われ、萎えた。

菩薩のある場所に行くとチベット僧がたくさんいた。

僧たちが思ってたよりカジュアルで笑った。

そして今日のゴールである菩薩があった場所にたどりつく。

菩薩がある場所からの景色

 この景色を見ながら(天気は悪いが)、諦めないでヌブラを目指して本当に良かったなとしみじみ思った。
何かを得た時の感動は、それを得るための苦労に比例する。というどこかで聞いたような言葉をあらためて、身をもって実感した一日だった。あと、自然の風景を観光する時は高いところに行けば間違いない。

霧でほとんど前が見えない中、宿までなんとか辿り着き、さすがに疲れたのか19時頃には眠りについた。







2012年10月20日土曜日

オフシーズンの脅威

いろいろ回って一番良かった旅行会社。全くお金にはならないことでも親身に相談に乗ってくれます。
 10月10日 レー
 
その日はレーに来てから一番体調が良かった。
というか、おととい無理をして、昨日は一日中寝込んでいたので、もう既にレーに4日間拘束されていることになる。

高山病と言うのはかなりやっかいな病気で、頭痛、倦怠感に加えて、酸素不足による消化器官の機能低下などにより食当たりの時と同じ症状が起こる。

さらにこの時期のラダックの気温は信じられないくらい低く(日本の真冬並み)、さらになぜか暖房がどの宿にもないので、部屋にいるなら布団にくるまって寝ているしかないという状況だった。

デリーを発つ日にタクシーを相乗りしたスペイン人からの「この時期のラダックはオフシーズンで交通の便も悪いし寒いし多分どこにも行けないよ。」という忠告をその時は軽く流していたが、
全くその通りで、なによりせっかく秘境ラダックへ来たのに本当にどこへも行けなさそうで、僕は焦り始めていた。
というのも体調は良くなったが、いろいろ旅行会社を回って教えてもらったこれから何日間かかけて僕が観光地を回るための手段と言うのがなかなか成功確率の低そうな方法だったからである。

前提として、宿を一歩出ればそこは真冬。という設定で読んで欲しい。
僕はアルチゴンパというチベット寺院とヌブラ谷という峡谷、そしてパンゴンレイクという湖に行く予定だったが、

まずアルチゴンパへの行き方
夕方のローカルバスでアルチゴンパのある村へ行き、一泊してレーに戻る。
(ローカルバスと言うのがまあちょっと難しそう)

パンゴンレイク
朝5時のパンゴンレイク行きのバスに乗り、バスの運転手の家にホームステイをして、翌朝バスでレーに戻る。(バスの運転手の家にホームステイとか聞いたことがないので。あと朝が早い)

ヌブラ谷
朝5時にヌブラ谷行きの車が良く通る山道にてヒッチハイクをし、一泊して、ヒッチハイクでレーに戻る。(朝5時。山道。そしてヒッチハイク。)

すべて大体1000円くらい。

なぜこんなサバイバルのような観光方法しかないかというと、今がオフシーズンだからである。
観光地行きのバスの本数は驚くほど少なく(もしくはなく)、行くならばジープを7000円くらいで貸し切っていくか、上記のような方法しか残っていなかったのである。

この時期のラダックが不便だとは知っていたが、まさかここまでだとは予想していなかった。

とはいえ、今日はラダックに来て初めてレーを出る日。焦りとともに、ようやく観光ができるという安心と、波に乗るためにもこのアルチゴンパ観光を何としても成功させなければという緊張が入り混じった不思議な気分で午前中を過ごした。

夕方になってバスの時間に合わせてバスターミナルへと向かう。
絶対に乗り遅れないようにしようと4時出発と聞いていたが3時半にバスターミナルに着いた。

が、ターミナルで待っていても一向にバスが来ない。
4時を過ぎて、さすがにおかしいと思い周りの人に聞いてみると、アルチゴンパ行きのバスはもう行ってしまって次はまた明日の夕方だという。
彼らが言うには、オフシーズンのせいでバスの出発時刻が正確ではなくなっているらしい。
またしてもオフシーズンと言う理由で。

今日もまたレーのホテルで拘束され布団にくるまり、焦りを感じながら朝を待たなければいけないということが信じられず、ターミナルに泊っていたバス全てに聞き込みをし、ターミナルから出て、ヒッチハイクもしてみたがこの日アルチゴンパに行く方法はもう本当にないようだった。

バスを逃してから宿まで帰る間、いや帰ってからもずっと、この旅で初めて感じるなんとも言えない絶望感に包まれていた。
このまま本当にどこにも行けずに無駄にラダックの日々を過ごしてしまうのではないか、いや、そもそもオフシーズンにラダックに来たこと自体が間違いだったのではないか。
これまで、多少のミスはあれど、行きたいところには全て行ってきたし、値段が高ければ工夫して安く観光もしてきた。ここまで上手くいかないのはこの旅で初めてだった。
それがショックで、とてもネガティブな気分になっていた。

結局次の日、朝一でヌブラ谷へ向かうことにした。
例のヒッチハイクでしか行けない最難関だったが、ネガティブになりすぎて、もし明日ヌブラにいけなかったらもうラダックを降りよう、そう決心していた。
追い打ちをかけるようにその日はめちゃくちゃ寒くて布団にくるまっていたら18時には眠りについていた。


2012年10月18日木曜日

宿と間違えて王宮に登る


10月8日 レー

朝起きると、頭痛がひどかった。
多分4時間くらいしか寝てはいけない初日に12時間寝てしまったのがいけなかったのだろう。

12時間吸い込み損ねた酸素をこれでもかというくらい吸いまくり、風呂に入ると、頭痛は治った。いや一旦引っ込んだ。


適当に決めた宿で別段不満があったわけではないが、街の中心地から少し離れていたので、中心地で宿を探すことに。

宿の前の林道。ここを通って中心地へ向かう。

しっかり道をあけて歩くヤク。ビビって遠くから撮って失敗したこの写真を見て思ったけど動物を撮る時は近くで撮った方がいい写真撮れますね。怖いけど。

やはりオフシーズンということで欧米人旅行者はほんの少ししかいなかった。日本人にいたっては多分僕だけ。

中心地に着き、さっそく宿を探すことに。ネットで評判が良かった「パレスビューゲストハウス」というゲストハウスを探していたので、聞き込み開始。

どうやら山の方にあるようだ。山の方向に聞き込みをしながら歩を進めていく。
バックパックを背負いながら「パレスビュー?パレスビュー?」と連呼する息の荒い男に嫌な顔一つせず、みんな親切に道を教えてくれる。

しかしなかなかパレスビューゲストハウスには着かず、しかも道が本格的に山道になっていく。
重い荷物とまたぶり返してきた頭痛で頭がおかしくなっていたのか「ビュー(View)ってことは街を見渡せる場所にあるんだ」と自己解決して、
そのまま登る。バックパックを背負ったまま。頭痛が本格的に始まった。

ほとんどの建物が自分より低い場所になった頃
ついに「パレスビュー→」という看板を見つけ、安堵と達成感から急いで駆け寄る。
そこにあったのは「パレス(旧王宮)」だった。

なんと僕がずっと宿だと思って目指して登っていたのは、観光地「旧王宮」だったのだ。
「パレスビュー。パレスビュー。」という連呼は「王宮が見たい。王宮が見たい。」と言う風に聞こえていたのだろうか。だとしたら気持ち悪すぎる。

しかも近くにいた人に尋ねると、「パレスビューゲストハウス」は普通に中心地にあるらしい。

悔しがっていても仕方ないので、これも何かの縁だと思って行く予定はなかったが王宮内を観光することに。

撮り方が下手すぎてただのボロアパートみたいに見えるけど、なかなかでかくて迫力があった。
印象としては王宮というよりは、僧が修行のためにこもるでかい建物という感じだった。

というのも、中は全く華美ではなく(昔は違ったかもしれない)、立派なのは仏像が置いてある部屋だけだった。

仏像が置いてある部屋。

この王宮の仏像はとにかく厳つかった。

超千手観音。どうしてここの仏像はこんなにおそろしくしてあるのか不思議だった。



王宮内を回っているとときどきベランダのようなところに出て、街全体が見渡せた。ここら辺は王宮らしい。しかもそれが絶景だった。







王宮を回り終えたあと、ふと山の上の方を見上げると多分レーでは一番高いところにあると思われる白い建物が見えた。


王宮に物足りなさを感じていた僕は、何を思ったか、せっかくここまで来たしということであの白い建物まで行って登ってみることにした。バックパックを背負ったまま。

登り始めてすぐに高山病の症状が本格的に出始める。
頭痛に吐き気。昨日あれだけ気をつけていたのに、調子に乗って一気に発病させてしまった。

これはやばいと思いすぐに山を降り、もはや「パレスビューゲストハウス」にこだわっている場合ではなかったので適当に宿を見つけて、水を大量に飲む、胃腸薬を飲む、深呼吸をしまくるなど、基本的な応急処置を施し、明日は一日ダウンだろうなと思いながら、横になった。
色々反省な一日になってしまった。