2012年10月22日月曜日

ヌブラ谷

ヌブラ行きのタクシーだたくさん通る山道
10月11日 ~ヌブラ谷~


朝5時に宿を出ると、外は真っ暗だった。

今日もまた失敗だったらラダック観光はもう諦めて今日にでも山を降りよう。と考えながら暗くて寒い早朝のレーを歩いた。

人気が全くない代わりに大量の犬がうろうろしていたり交尾していたりしてなかなか不気味だった。
こんな状況の中、山道まで行ってあるのかどうかもわからないヌブラ谷行きのタクシーをヒッチハイクする。さすがに成功する見込みは低いな、と思いながら歩いた。

しばらく歩くともっと犬が増えて、異常な数になって前に進めないほどになってしまった。
その時偶然かなり遠くに現地人が通りかかったので、走って近寄った。現地人はすごく野犬慣れしているのでボディーガードを得た気分になり僕は安心したが、相手はいきなり暗闇から笑顔で現れた僕にちょっとビビっていた。

彼はスリナガルというラダック北西に位置するカシミール地方の出身でたまたま同い年だった。今は大学2年生で卒業後はニュージーランドでパイロットになるらしい。パイロット志望の学生とは初めて出会ったのでかなりテンションが上がった。

しかも彼によると、なんと本当にヌブラ谷行きのタクシーが通る場所があるらしい。
昨日からほとんど諦めモードだったので本当にうれしかった。今までの不運が全て報われた気分になって彼と抱き合って(というか一方的に抱きついて)喜んだ。

山道を進むと、それらしきタクシーの集団があった。彼は最後までちゃんと送り届けてくれた。さすがパイロット志望。お礼を言いまくって、連絡先を交換して別れた。話もすごく盛り上がって気が合いそうだったし、また会えるといいな。

タクシーには僕1人かと思いきや、出発して15分足らずで1人また1人と計6人乗り込んできて7人乗りになった。地元の人にとってこの方法は割とメジャーらしい。旅行者はいなかった。

そしてこのタクシーからの景色が最高だった。
昨日からずっとネガティブな気分だったのも相まって、泣きそうになるほど感動した。
とにかく標高が上がれば上がるほど景色が良くなり、レーの景色などほんの前座であったかのように、物凄い絶景が延々と続いていた。





しかもヌブラまでの景色は四季が移りゆくようだった。
さっきまで砂や岩で覆われていた山肌がいきなり一面の銀世界になり、秋の景色になり、高山独特の青い川が現れたりと、ものの数時間の間に次々と景色が変わっていき全く飽きない。

冬山

秋山



あっという間にヌブラ谷に着き、ドライバーが紹介してくれた宿に荷物を置き、早速散策に出かけた。

ヌブラ谷にあるディスキット村からの景色

いかついヌブラ

のどかなヌブラ

ザ・ヌブラ
こんな大自然の中をずっと1人で歩いた。
ヌブラでは旅行者にはとうとう1人も会わなかった。本当に人が少なく、歩いていてもたまに農家の人とすれ違うくらいで、まさにこの絶景を独り占めしているという感覚。
オフシーズンの唯一のメリットだろう。
途中、人が周りに全くいなくなった。
しばらく待っても誰も来なかったのでちょっと昼寝をしてみた。起きて、本を読んだり妄想にふけったり。
その間も全く人が通らず、しまいには周りに牛もいなくなり、鳴き声も聞こえなくなった。
あたりがしーんとした空気に包まれる。
悟りを開いたかと思ったが、どうやら天気が怪しくなってきたようだった。

宿に戻らなければいけなさそうだったので、最後にヌブラ谷で一番高いところにある菩薩を見に行ってみることにした。
一昨年ここにダライラマが訪れた際に建てられた新しい菩薩らしい。登ってみるとチベット僧がたくさんいた。
菩薩を目指して登っている際に見つけたいい感じの建物群。

この建物の山奥にひっそりとそびえる感に惚れてずっと見ていた。
ずっとみているとだんだんロマンチックな気分になって、こんな場所にもう一つの村があるのかな、とか、今は誰もいないけど昔ここで文化が栄えたのかなとかいろいろ妄想していると、下からバイクで坂を上ってきた坊さんに「あれは寺だよ」と軽く言われ、萎えた。

菩薩のある場所に行くとチベット僧がたくさんいた。

僧たちが思ってたよりカジュアルで笑った。

そして今日のゴールである菩薩があった場所にたどりつく。

菩薩がある場所からの景色

 この景色を見ながら(天気は悪いが)、諦めないでヌブラを目指して本当に良かったなとしみじみ思った。
何かを得た時の感動は、それを得るための苦労に比例する。というどこかで聞いたような言葉をあらためて、身をもって実感した一日だった。あと、自然の風景を観光する時は高いところに行けば間違いない。

霧でほとんど前が見えない中、宿までなんとか辿り着き、さすがに疲れたのか19時頃には眠りについた。







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