2012年11月22日木曜日

イスラエル4日目

11月16日 エルサレム

昨日無駄に夜更かししてしまったせいで、この日は昼ごろまで寝てしまった。
シャワーを浴びて、昼食を作って食べただけでいつの間にか14時である。日本にいた時はこういうことがあるとひどく自分を責めてしまうのだが、旅先では不思議とまあたまにはこういうのもありかな、と思える。
僕が出かけようと準備していると、同じくこの家で寝泊まりしているアメリカ人の女の子が写真を撮って欲しいと行ってきた。ベランダに案内され、ここで私のことをファッショナブルに撮ってくれと言う。不思議ちゃんだなーと思いながらもシャッターを切ると、撮れた写真を見て「なんて可愛いの!信じられない!」と大はしゃぎでベランダから出て行って、ポカンとする僕を尻目に服を着替えてベランダに戻ってきた。そしてまた写真を撮るように言われて、写真を取ると「ああ神よ!なんて美しいの!」と大喜びしていた。欧米の女の子はああいうものなんだろうか。でもあれだけ素直に感情を表現されるとこっちも気持ちがいい。
その後もおしゃべりをしつつ写真撮影を続け、結局出かけることなく日が暮れ始めてしまった。
まあたまにはこういうのもありか。

夕方、イブラヒムおじいさんの家でボランティアとして働く人たちとエルサレムの旧市街に繰り出した。金曜日の日没から土曜日の日没まではユダヤ教で安息日と定められていて、店や公共施設は全て閉まり、バスや列車も動かなくなる。旧市街はさながらゴーストタウンになる。その代わりというわけではないが金曜日の夜は旧市街の中の嘆きの壁が多くのユダヤ人でにぎわう。ユダヤ人風の華金である。嘆きの壁がいつもの5割増しの白熱電球でライトアップされる中、聖書の一節を音楽に乗せて歌う人たちがいれば、騒ぎ出す若者たちもいるし、いつものようにひたすら壁に向かって祈る人もいる。ただ全ての人に共通しているのは、みんなどこか喜びに満ちた表情をしているという点で、一周回って涙を流している人もいた。日本にも華金で酔いつぶれて泣いている人がいるけど、それとはまた違うのかな。彼らが嘆きの壁にやってくる本当の理由をよく分かっていないから何とも言えない。

そういえば、僕らが嘆きの壁に到着する直前にミサイル警報の音がエルサレムの街に鳴り響いた。日本の戦争映画などでよく見る空襲警報の音に似ていて落ち着かなかった。その時は一緒にいたボランティアの人たちが今のは誤報だと言っていたので特に避難などはしなかったが、帰って調べてみるとどうやらさっきの警報は本物だったようだ。エルサレムの南東のヨルダン川西岸に落ちたらしい。

嘆きの壁で一緒にいた人たちと別れ、旧市街を散策する。旧市街は一度歩いていたが、安息日の、店がほとんど閉まっている旧市街を歩いてみたかった。
この日の旧市街の街並みは前回歩いた時の姿とは全く違ったもので、街の光もあまりなく、本当にほぼ全ての店が閉まって、真っ暗だった。ガザの情勢がああだからなのか、今日が金曜日でユダヤ人が多く集まるからなのかは分からないけど、旧市街のテロやミサイルに対する警戒がいつにもまして強かった。街には多くの武装した兵士が歩き、時々ミサイル警報が鳴った時の対応について説明する放送が街に流れていた。
しばらく歩いていると、もう半分閉まりかけのカフェで従業員が集まってテレビのニュースを見ていたので、僕もそこに混じってみた。ガザ地区からテルアビブへ発射されたミサイルがテルアビブの少し南の街に落ちて被害が出ている様子を映していた。
彼らは僕が日本人だということを知ると、今イスラエルは危険だから早く日本に帰った方がいいと親切に言ってくれた。それがなんだかとても嬉しくて、こちらも気を許して色々と話した。でも再びニュースに目をやって、僕がバッドニュースだね、みたいなことを言うと、何言ってるんだ最高だ、と言っていた。彼らはパレスチナ人だった。イスラエルは嫌いだから、最高だ。と騒ぎだした。

僕は黙ってその場を離れた。
そして旧市街の出口へ向かう途中、昨日のデモや分離壁の絵や写真、壁にあった銃痕の跡、そして宿で旅人に聞いた話を走馬灯のように思い出していた。
僕がベツレヘムに行った日、彼らはヘブロンというパレスチナ自治区に行ったらしい。ヘブロンにはイスラエル人による入植地が街のど真ん中にあり、彼らはパレスチナ人にガイドを頼んでその入植地を高台から見降ろした。その時、彼らのすぐ下(そこはもうイスラエル人入植地でパレスチナ人はいない)でバスケットボールをしていた子供たちが、パレスチナ人と一緒に行動する彼らと眼が合うなり物凄い勢いでののしりながら石を投げつけてきたのだ。イスラエル兵もその状況を見ていたらしいが、イスラエルの子供たちを強く制止することはしなかったという。
そしてさっきのパレスチナ人の言葉。
この2日間でパレスチナ問題の根深さをほんの少し垣間見た気がした。

平和は祈ってやまない。けれどもどれだけ考えても、超楽観的な解決法さえ思い浮かばない。あと2日でこの国を去らなければいけないのが、なんとも切なかった。


※この日は充電を忘れて写真は撮れず。。。

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