2012年11月26日月曜日

トルコ初日

11月19日 イスタンブール


恐ろしい程の睡魔の中、イスタンブール・サビハ空港にて入国手続きを終え、ヨーロッパの玄関口イスタンブールに到着。
早朝だったこともあり気温はとても低く、ラダックぶりの白い息にヨーロッパに近づいていることを実感し、心が躍った。
サビハ空港はイスタンブールのマイナー空港で、ボスポラス海峡が一望できる中心地まではバスで90分もかかる。今まで訪れた国は空港から街の中心部までが比較的近かったので、ひどく不便に感じた。きっと成田空港に到着した外国人も、日本の一番メジャーな空港から東京都までの距離に驚くのだろう。

イスタンブールの中心地は僕の想像とは大きくかけ離れ、高層ビルが立ち並ぶ大都会だった。かといって、それらがボスポラス海峡の景観を損ねているわけでもなく、高層ビルの隙間を縫って街を埋め尽くす色とりどりの古い建物やモスクが海や山と絶妙にマッチして、古都イスタンブールの歴史的な雰囲気を保ってくれていた。

一泊二日でイスタンブールを発つ予定だったので、あらかじめネットで予約しておいた宿に荷物を置いて急いで街の散策に出かける。
イスタンブールはボスポラス海峡によってヨーロッパ側とアジア側に分断されていて、多くの観光客が集まるのはヨーロッパ側だ。さらにヨーロッパ側も、高層ビルや雑居ビルが立ち並ぶ新市街と、市場やモスクなどが集まる旧市街に分かれ、見どころは旧市街に集中している(らしい)。
新市街にある宿を出てから旧市街へたどり着くまでのほんの数十分の間に、イスタンブールの滞在期間を2日間(実質1日)とした自分のスケジューリングを恨む程にこの街に魅了されてしまった。
新市街を歩けば、いたるところに点在する無料のWIFIスポットや路面電車を用いて環境に配慮する点、綺麗に清掃された幹線道路などにこの街の先進性を感じ、かと思えば旧市街付近の溢れんばかりの車やバスの量、そして活気あふれる人々は、今まさに発展中のインドやエジプトを彷彿とさせる。本当にこれからが楽しみな街だ。
中でも僕が引きつけられたのは、ガラタ塔と呼ばれるイスタンブールの街並みを一望できる塔の周辺に軒を連ねる多くのカフェや雑貨屋である。古風で厳格な雰囲気を持つ店から、スタイリッシュな内装を持つ店、綺麗にガーデニングされゆったりとくつろげそうなログハウスなど、それぞれの店が独特の個性を持っていて、全部見て回るだけでも軽く数時間経ってしまう。もしこの週が、僕の旅の中でときおり訪れる節約週間でなかったら、カフェ巡りでもしていたと思う。
 



 
 旧市街と新市街はボスポラス海峡へと流れる川によって隔てられていて、そこにガラタ橋という有名な橋がかかっている。ちょうどこの橋からボスポラス海峡が広がっていて、その海峡によって分断されたアジア大陸の終わりとヨーロッパ大陸の始まりが一度に見られるということで、イスタンブールでは唯一絶対に行こうと決めていた場所だ。
それほど素晴らしい景色を見られる橋が恋人たちの憩いの場所になっていないわけがないと、それなりの覚悟をして行ったわけだが、現実と想像とはかけ離れているもので、そこはおやじたちが集まる巨大な釣り場だった。



ガラタ橋からの景色はまあまあといったところで、いまひとつ物足りなかった。二大陸の端を一度に見る、というたったひとつしかない目的に妥協したくなかった僕はさっき通ったガラタ塔に登ってみることにした。
ガラタ橋を引き返して、ガラタ塔のある高台を登る。なかなか急な斜面だったが、道の両脇に立ち並ぶ店がどれも本当に個性的で、それを見ながら歩いていると不思議と疲れなかった。
ガラタ塔にたどり着くと、入口には長蛇の列が出来ていてそのほとんどが恋人同士で訪れていた。油断していた、どうやら彼らの憩いの場はここだったようだ。
不意をつかれてうろたえながら階段を上り、最上階にたどり着く。
やはり恋人たちが集まるスポットというのはいつも間違いがない。そこには僕の望んでいた景色が広がっていた。
ガラタ橋から見た時にはただの島のように見えていたアジア大陸が、ぼやけて見えなくなるまで延々と続いていて、でもそれが広大なアジア大陸のほんの一部だということもしっかりと想像させてくれるような景色。
まがいになりにもアジア、中東を旅してきた僕にとってこの風景を前にした時の達成感は筆舌に尽くしがたい。でもきっと自転車やバスなど、ずっと陸路でアジアを旅してきた人たちはこの何十倍もの感動を味わうのだろう。

日が暮れてイスタンブールの街がライトアップされるまで、1時間くらいぼーっとその景色を眺めていた。その間、これまでの旅をざっと振り返ってみた。なんとなくそういう場所のような気がしたから。
アジアを回っていた頃は今考えても不思議なくらい、自分の旅に自信が持てなかった。なぜか貴重な体験を沢山しなければいけないと思っていたり、そういう体験をしている他の旅人を羨ましがったり、旅の予定をこなせなかっただけで自分を責めたり、なにかにつけて色んな人たちの旅と自分の旅を比べてしまったり。
ふっ切れたのは、ラダックでもらった風邪がムンバイあたりで完治した頃だった。自分の中に明らかにいくつかの変化があって、それらは旅を始めた頃に望んでいた変化ではなかったけど、悪くないと思えるものだった。
何か自分で重要だと思うことを続けていれば、必ず何かしら変化なり気づきがあるということを学べたのも大きい。旅で続けていることのひとつに、何かを見たら何か考える、何も感じなくてもとりあえず何か考える、というのがあるのだけれど、2ヶ月半続けていたら本当に何かを見たら反射的にとりあえず何かを考えられるようになった。
日記も日本にいた頃は何度も、続けようと決心しては挫折する、というのを繰り返していたのに、旅に出てからは不思議と一日もやめることなく続けられた。きっと旅に出たら人は多かれ少なかれ良くも悪くも人が変わるんだと思う。僕も今人生史上最も非社交的だ。
別に旅に出ること自体が大事なのではなくて、旅に出ることで日常的な生活を一旦離れ、少し環境が変わって、今まで保ってきた自分というものが少し揺らいだタイミングでいかに自分の中に変化をもたらすか、が大事なのかなと思ったり。
ずいぶん話がそれたけど、まあこういう話は帰国してしばらく経ってみないと何とも言えない。帰国して日常的な生活を再開した途端元通りなんてこともありえるだろう。でも今はとりあえずこの貴重な環境の中で自分の中にできるだけたくさんの変化を作りだす努力を続けようと思う。そしてその変化を帰国後失わないようにするための算段もそろそろたて始めるつもり。
 
 
とりあえずそんな風にアジア、中東の日々を振り返っていたら、あたりはすっかり暗くなっていつの間にか息が白くなっていた。
トルコで夜道を歩いていて拳銃を突きつけられたという話を2度も耳にしていたので、一夜きりの絶景に名残惜しさを感じながらも、早めに宿に帰った。



~この日撮った写真~
新市街の中心、タクシム広場。
 
宿。おしゃれで清潔でさすがヨーロッパ。

ガラタ橋。巨大な釣り場になっている。

トルコ料理。イスタンブールの大衆食堂はビュッフェ形式で、好きなものをプレートに乗せていき、最後にお金を払う。これで300円くらい。

トルコ料理のご飯はなぜかピラフみたいな味がついててめちゃくちゃうまい。
路面電車(トラム)。

ガラタ橋から見たアジア。


おしゃれショップ集。







ガラタ塔。

ガラタ塔から見たアジア。
ガラタ塔から見た旧市街。

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